良性そもそも論

「すみません、今何の話してるんでしたっけ?」
クライアント、社内、パートナー、営業先・・・・
最近、折に触れてこの言葉を口にします。
もはや口癖です。
無論、居眠りをしているわけでも、相手を馬鹿にしているわけでもありません。
そう思われないように、意外と言い方に気を遣うセリフですが、これはどうしても必要なセリフです。
もちろん、「ゴールを再確認するため」です。
例えば、Aというゴールを達成するために、Bという問題があり、そのためにCという課題を考えているクライアントから、そのやり方の相談を受けたとします。
「ハエモリくん、Cをやりたいと思ってるんだけどね・・・」
可否を答える前に、こんな感じのことを言います。
「ごめんなさい、そもそもCという課題設定の背景となった問題ってなんですか?・・B、なるほど。ちなみにそれに紐づくゴールってなんですか?」
課題を設定している以上、問題が必ず存在します。
そしてこの問題はどんなゴールを達成するための障害なのかを明確にします。
そうすると、視野が広くなり、打ち手のバリエーションが増えます。
Bを解決するにあたり、Cよりも優先的な課題があるかもしれません。
いや、そもそもBよりもクリティカルな問題があるかもしれません。
ゴール設定を誤らない、というのは当たり前でかんたんなように見えて、現場ではかなりの確率で見落とされたままで議論が進んでいるように感じます。
ここ数週間だけでも、下記のようなケースがありました。イメージして頂きやすいように列挙します。
①
「Aの自動化、という仕様は少し難しく、手動でアプリ内or各端末側で設定してもらうような形になりますね。どちらが良いですか?」
アプリ開発。
→そもそものゴールは何でしょうか?
ユーザーの手数を減らし、ユーザーの快適を実現する
なので、常にMTGは、ユーザーが快適になるための議論の場です。
ここを念頭に置くと、そもそもユーザー手数の変わらない、アプリ内or各端末で設定の二択の議論はこの場にはそぐわない、ということになります。
②
バグ発生時の行動マニュアルのたたき台作成をエンジニアに指示したとき。
バグ発生
↓
クライアントヒアリング
↓
調査
・
・
という様に提出がありました。
フローとしては間違いありません。
しかし、バグ発生時の行動。
→そもそものゴールは何でしょうか?
バグ除去のスピード最速化
であり、それがあるならば、このマニュアルの各フローに詳細な目標所要時間のFIXの記載がない、というのはロジカルに考えておかしい、という帰結になります。
ここもゴールから逆算すれば、何が一番大切な要素か、何が抜けてはいけない要素なのかを容易に導き出すことができます。
③
最近、制作したWEBサイトのコンテンツを褒めてくれた、ビジネスの大先輩より、
「あのサイト、ちょっと横文字が多いかな?そこだけは気をつけなきゃならんよ」
とご指摘を頂きました。
言葉と文字によるアウトプット。
→そもそものゴールは何でしょうか?
コミュニケーションの最速化
であり、「それっぽくカッコつくこと」ではありません。
ビジネス用語の横文字の頻出によってこのゴールが妨げられるのであれば、横文字は百害あって一利無しです。
④
エンジニアが納期に間に合いません。
マネージャーに状況を聞くと、
「メールで朝昼夜としっかり連絡済みですが、連絡がとれません。」
→そもそもののゴールは何でしょうか?
クライアントにFIXした期限で納品する
であり、自分のせいでないことが証明できる状況を作ることがゴールではありません。差し迫った状況を考えると、連絡方法はメールではなく電話であるべきで、朝昼夜、のスパンではコンタクトの回数が少ない、と言えるでしょう。
⑤
「とにかく早く結婚して子供が欲しい」
→そもそものゴールは何でしょうか?
愛する人間と幸せな家庭を築くこと、
であり、とにかく結婚することがゴールではありません。
⑥
「とにかくお金持ちになりたい」
→そもそものゴールは何でしょうか?
人を守り、幸せにするための選択の自由と力を身につける
であり、お金持ちになること自体がゴールではありません。
そもそものゴールさえ誤らなければ、驚くほど話はスリムに、シンプルに、ロジカルになります。
試しに、「そもそも論」で検索すると、あまり良い意味では使われないようですが、
意味のあるそもそも論は、レイヤーを逆戻しはしますが、結局「急がばまわれ」なのだと感じます。
常に最上段のゴールを意識して、「そもそも論」を頭に常駐させ、より議論は本質的に、スピード感のあるものにしていかなければならないと思うのです。